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オトレン プチ・サロン イヴ・アンリ コンサートを振り返って
投稿日:2025年7月25日|最終更新日時:2025年7月26日|カテゴリー:オトレン プチ・サロン
2025年4月20日、オトレン プチ・サロンにて開催されました世界的ピアニスト、イヴ・アンリ氏による特別コンサートは、今なお心に残る素晴らしい体験となりました。
開催から時間が経ってしまいましたが、その印象深さを皆さまと共有したく、遅ればせながら感想をお届けいたします。
今回のコンサートにつきまして
今回のコンサートは、日頃から音練をご愛顧くださっているお客様への感謝の気持ちを込め、音練の会員様限定で無料でのご招待という特別な企画として開催させていただきました。
ご出演いただいたのは、ショパンをはじめとするロマン派音楽の世界的ピアニストであり、パリ国立高等音楽院教授として数多くの優れた音楽家を輩出されている教育者としても名高いイヴ・アンリ氏です。
当サロンに設置しておりますグランドピアノ〈ベヒシュタイン B-212〉の製造元であるドイツ・ベヒシュタイン社の、日本国内正規輸入総代理店であるベヒシュタイン・ジャパン株式会社様の多大なるご協力のもと、今回のコンサートが実現いたしました。
ありがたいことに当日は想像を超える多くのご応募をいただきました。改めまして、ご来場いただき誠にありがとうございました。また、席数に限りがあり、今回は抽選にてご来場いただけなかった皆様には誠に申し訳なく存じます。またいつか、皆様にお楽しみいただけるような機会を設けられましたら、その折にはぜひご応募いただけましたら心より幸いです。
ロマン派から印象派へ −演奏プログラムについて
当日の演奏プログラムでは、ショパンの『華麗なる大円舞曲』、『ノクターン』『エチュード 作品10』より 第12番「革命」、第3番「別れの曲」、第5番「黒鍵のエチュード」、ドビュッシーの『2つのアラベスク』、『水の反映』、ラヴェルの『ソナチネ』といったロマン派から印象派に繋がる珠玉の名曲を演奏していただきました。
ショパンの世界的名手による演奏
これまでショパン国際コンクールの審査員も務められ、現在も国際ショパン協会連盟の理事を務められているアンリ先生によるショパンの演奏を聞けたことは何ものにも代えがたい大きな喜びでした。
まず『華麗なる大円舞曲』では、コンサートの幕開けを飾るのにふさわしく、華やかで躍動感にあふれた演奏で、サロン全体を明るく幸福な空気に包みました。
『ノクターン』では、甘美で繊細な旋律のなかに、陰影を帯びた音色が深く響き、会場は夜想曲の深い抒情に満たされました。
『エチュード』では、名高い「革命」の演奏の情熱的な迫力に一気に引き込まれました。続く「別れの曲」では胸を打つ情感に満ちた演奏で、「黒鍵のエチュード」では軽快極まる華麗な指捌きで、その見事な技巧の美しさに魅了されました。
フランス印象派と、彼らが愛したベヒシュタインで奏でられた名曲たち
コンサートはショパンの作品からドビュッシーやラヴェルといったフランス印象派の楽曲へと移り変わり、ピエール・サンカン氏やアルド・チッコリーニ氏といったフランス音楽界の巨匠に師事したアンリ氏による、フランス伝統の洗練された色彩豊かなピアノの演奏が存分に発揮されました。
特に、「すべてのピアノ音楽は、ベヒシュタインのためだけに書かれるべきだ」と言うまでにドビュッシーが愛したと言われ、ラヴェルの生家でも大切に弾かれていたと伝えられているほどフランス印象派の音楽と深いつながりのあるベヒシュタインのピアノの魅力が、アンリ氏によって最大限までに引き出されている様は圧巻でした。
ドビュッシーの『2つのアラベスク』では、瑞々しく繊細な旋律が軽やかに紡がれていき、たちまち幻想的な音の世界へと誘われました。
『水の反映』では、豊かな音色が透明感あふれるアンリ氏のタッチによって見事に表現され、水面に映る光のような繊細で幻想的な美しさがとても印象的でした。
プログラムの最後を飾るラヴェルの『ソナチネ』は、どこまでもエレガントな演奏が深い余韻をもたらし、息をのむほどに感動いたしました。
二度のアンコールで幕を閉じた珠玉の演奏
プログラム上の演奏を終えたのちも、鳴り止まない拍手に応え、アンコールに二度も応じてくださいました。ショパンの『子犬のワルツ』では軽快で愛らしい旋律が聴衆の皆様を笑顔にし、シューベルトの『ハンガリー風のメロディ』では情熱的でドラマティックな旋律が聴く人の心を深く揺さぶり、コンサートは大団円のまま、終演を迎えました。
アンリ氏の演奏は、卓越した技術だけでなく、この上なく豊かな感情表現と深い音楽性によって、一音一音が深く心に染み渡るようでした。素晴らしい演奏を、ベヒシュタインの音色と共に堪能できるまさに一期一会の特別な音楽体験となりました。
開催からしばらく経ちましたが、あの日のコンサートの感動は色褪せることなく、心の中に今なお鮮明に残っています。お越し下さった方々にとっても、音楽の喜びを改めて感じていただける機会となっておりましたら、これに勝る喜びはございません。
オトレン プチ・サロンにつきまして 祝・1周年🎊
オトレン プチ・サロンは、イヴ・アンリ氏の出身地でもあるフランスのサロン文化のように、人々が集い音楽を共に楽しめる親密で温かな空間を目指しています。そのため、コンサート終了後には、イヴ・アンリ氏から「オトレン プチ・サロンにはパリのサロンのような親密な雰囲気がある」とのお言葉をいただき、大変光栄に感じました。
そして、2025年8月8日にはおかげさまでオトレン プチ・サロンが1周年を迎えます。この1年間、数多くのコンサートや発表会、コンクール本番前のリハーサルやアンサンブル練習などなど、たくさんのお客様に音楽を楽しんでいただける場としてご利用いただけましたこと、心より感謝申し上げます。
これからもスタジオ共々、皆様に愛され、音楽を心から楽しんでいただけるサロンを目指して、スタッフ一同努力してまいります。今後とも何卒、よろしくお願い申し上げます。
音楽練習場オトレン
P.S. ショパン国際コンクールのピアノにベヒシュタインが選出されました!
最後に追伸として、嬉しいニュースをお届けします。今年度のショパン国際コンクールにおいて、ベヒシュタインのピアノが正式に大会公式ピアノとして選ばれました。これまではスタインウェイ、ヤマハ、カワイ、ファツィオリのみでしたが、2025年、ベヒシュタインが加わりました。これにより、出場者が5つのピアノから自分の好みのピアノを選びコンクールに臨まれます。
コンクールそのものだけでなく、今から出場者の皆様によるベヒシュタインの演奏が楽しみです。
オトレンでは、東京都内でも数少ないベヒシュタインのピアノを弾ける音楽練習場となっております。サロンにてグランドピアノ(B-212)に加え、スタジオでもアップライトピアノ(A2)をご用意しております。ショパンコンクール前に、オトレンにて「ピアノのストラディバリウス」と呼ばれるベヒシュタインの音色をぜひ楽しんでいただけましたら幸いです。
イヴ・アンリ氏 プロフィール
イヴ・アンリ Yves Henry
1959年フランス、エヴルー生まれ。パリ国立高等音楽院、パリ地方音楽院にて教鞭をとる一方、演奏者、作曲家として活躍する。故ピエール・サンカン、故アルド・チッコリーニに師事。1981年ロベルト・シューマン国際コンクール第1位。
2011年よりノアン音楽祭会長就任、2015年ショパン国際ピアノコンクールの事前審査員、2015年ポーランド・ショパンコンクールのヤング部門の審査員、2016年〜ノアンフェスティバル ショパン・イン・ジャパン・ピアノコンクール審査委員長、2016年、2024年ドイツ・シューマン国際音楽コンクール審査員、2023年第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールの審査員など、主要国際コンクールの審査員を務める。
2010年、ショパン200年祭に際してワルシャワでプログラム委員を務める。同年3月にはフランス文部省よりフランス芸術文化勲章(オフィシエ)を叙勲される。またフランスのショパンイヤーの貢献を讃え、ポーランド最高位の文化勲章「グロリア・アルティス」を叙勲される。2022年より、ワルシャワに本部を置く「国際ショパン協会連盟」理事を務める。
2011年の《リスト・イヤー》記念企画では、フランツ・リストの代表作をC.ベヒシュタインのコンサートグランドで録音・演奏し、同社の国際プロジェクトに貢献。以後も、ベヒシュタインの公式アーティストページに名を連ねる演奏家として、ベルリン、パリ、東京の各ベヒシュタイン・センターで定期的にマスタークラスやリサイタルを行い、同社の楽器の魅力を世界に伝えている。